グラクソ・スミスクライン株式会社 第一三共株式会社パンフレットより引用
ロタウイルス胃腸炎とは
ウイルスが原因の感染性腸炎
ロタウィルス胃腸炎は、乳幼児に多く起こる感染性胃腸炎のひとつで、ロタウィルスというウィルスが原因です。感染性胃腸炎はその原因によってウィルスによるものと、細菌によるものとに分けることができます。胃腸炎の原因ウィルスはロタウィルスの他に、ノロウィルスなどがあります。日本では毎年、冬の前半にノロウィルス、冬の後半から春にかけてロタウィルスによる胃腸炎が流行します。
乳幼児期の胃腸炎では最大級
☆昼間は大丈夫そうでも、夜間に状態が急変することも
ロタウィルス胃腸炎は、乳幼児の胃腸炎の中ではもっともひどくなりやすいことが知られています。こまめに水分を与えているつもりでも、おう吐や下痢がひどいと、水分補給が間に合わなくなったり、赤ちゃんが口から何も受けつけなくなったりします。こうなると、体の小さな赤ちゃんは、急激に脱水が進みますので、すぐに適切な処理をしないと命にかかわることもあるのです。
また、ロタウィルスは、インフルエンザ、突発性発疹に次ぐ、小児の脳炎、脳症の原因であることが報告されています。
初感染時に重症化しやすい
☆5歳までにみんなかかるけれど…
ロタウィルス胃腸炎は、世界中のほぼ全員が5歳までに1度は経験するといわれています。しかし、体が小さいうちに初めて感染すると重症化しやすく、入院による治療が必要になることもあります。日本では、ロタウイルス胃腸炎で入院する小児の3割が0歳児、4割が1歳児です。
一方、ロタウィルスに一度感染すると免疫がつきますので、その後は感染しても胃腸炎の症状は軽くなっていきます。
つらい下痢やおう吐が7日間程度続く
☆根本的な治療はまだありません
白っぽい水のような下痢や激しいおう吐が特徴的なロタウィルス胃腸炎は、他の胃腸炎よりも回復に時間がかかります。
通常、症状がおさまるまで7日間程度必要とされ、この間に繰り返される下痢やおう吐により、脱水を起こしやすくなります。
今のところ、ロタウィルス自体に効く薬はなく、下痢やおう吐を薬で止めることはしません。そのため、ロタウィルス胃腸炎にかかったら、こまめな水分補給で脱水を防ぎ、自然に治っていくのを待つしかありません。
ロタウィルスは感染力が強い
☆手洗いや消毒だけでは防ぎきれません
ロタウィルスは、衛生状態に関係なく世界中のこどもに胃腸炎を起こします。それは、ウィルスの感染力の強さに理由があります。まずロタウィルスは、環境に強く、乾いた場所では約10日間生きています。また石けんや消毒用アルコールにも強いため、塩素系漂白剤や哺乳瓶用の消毒液などでしっかり消毒しなければ死滅しません。
さらに、胃腸炎の症状がおさまった後も約1週間は、何兆個ものウィルスが便中に排出されているといわれています。赤ちゃんなら、わずかな数のウィルスがあれば感染して胃腸炎を起こしますので、保育施設などで、ひとたび誰かが感染すれば、どんなに手洗いや消毒をしていても、全員がロタウィルス胃腸炎にかかってしまうことさえあるのです。
ロタウイルス胃腸炎の予防ワクチン
ロタウイルスワクチンには2種類あります
ロタリックスとロタテックの2種類があります。
ロタリックスは 1価、ロタテックは5価の抗原に有効とされています。ロタリックスはG1Pのロタウイルス 、ロタテックはG1、G2、G3、G4、G9の5種類のロタウイルス に有効とされていますが、G1単独でも他の抗原に対しある程度有効であるとされています。
接種回数はロタリックスが2回、ロタテックは3回です。コストはロタリックスが1回15000円なので2回接種で30000円、ロタテックは1回9000円で3回接種で27000円と若干お安くなります。
以上よりコストパーフォーマンスのいいのは、ロタテック、簡単でいいのはロタリックスといえますが、接種開始時期が遅れた場合は2回でいいロタリックスをすすめています。
ロタウイルス胃腸炎はワクチンで予防可能
感染力が強く、重症化しやすいロタウィルス胃腸炎はから小さな赤ちゃんを守るためにWHO(世界保健機関)などではワクチン接種を推奨しています。日本では2011年秋頃から接種が可能になる予定ですが、海外では数年前からワクチンの接種が行われ現在では120ヵ国を超えています。
その結果、ワクチンを接種した赤ちゃんひとりひとりの重症胃腸炎が予防できるようになっただけでなく、接種して免疫がついた赤ちゃんが増えたために、その集団内での感染が抑えられる効果がみられてきたようです。
ママからの免疫がなくなる前にワクチンを
ロタウィルス胃腸炎予防ワクチンは、ロタウィルスの病原性を弱めて増殖させ、精製してからシロップ状にした飲む生ワクチンです(注射剤ではありません)。 接種対象の赤ちゃんは、生後6週から24週までです。この間に接種完了できるよう、早めに医師にご相談ください。体質などにより、なかには効果がみられない人や接種できない人もいます。
ロタリックス、ロタテック内用液は、ロタウィルス胃腸炎を予防するワクチンです
ロタリックス内用液を2回、ロタテック内用液を3回接種すると、重症ロタウイルス胃腸炎の発症をほぼ100%抑えられることが確かめられています。ロタウイルス胃腸炎は、ロタウイルスに何度か感染することで症状が軽くなります。ロタリックス内用液、ロタテック内用液はこの性質を応用していますので、自然に感染 したときと同じように、ヒトロタウイルスから守られ、胃腸炎の重症化を抑える効果があることが認められています。
ロタリックス内用液の接種は2回、ロタテックは3回受けてください
ロタリックスの接種時期…生後6週~24週2回目の接種は、1回目の接種から4週間以上あけてください。なるべく1回目の接種は生後6~12週にしたほうが安全とされています。 遅くとも生後24週までには接種を完了させてください。
ロタテックの接種時期…生後6週~32週 接種間隔を4週間以上あけて3回経口接種してください。なるべく1回目の接種は生後6~12週にしたほうが安全とされています。
遅くとも生後32週までには接種を完了させてください。
ロタリックス、ロタテック内用液を接種した後に注意していただきたいこと
☆接種後30分は安静にしてください
重いアレルギー症状が起こることもありますので、すぐには帰宅せず、少なくとも30分間は様子をみてください。当日は過激な運動はさせないでください
☆「体長の変化」にご注意ください
健康状態の観察を行い、高熱、けいれんなどの異常な症状が出たときは、速やかに医師の診察を受けるようにしてください。
☆「衛生状態」にご注意ください
ワクチン接種後1週間程度は便中にウイルスが排泄されますが、排泄されたウイルスによって胃腸炎を発症する可能性は低いことが確認されています。念のために、おむつ交換後などワクチン接種を受けたお子様と接した際には手洗いするなど注意してください。特にご家族の中で免疫系に異常のある方がいる場合には、ワクチン接種を受けたお子様と接したあとの手洗いを徹底するなど注意してください。
☆ 腸重積の症状にご注意ください
接種後に次のような症状がみられた場合は、家庭で様子をみて症状を長引かせないよう、速やかに医師の診察を受けるようにしてください。
○ぐったりする(不機嫌)
○泣きと不機嫌を繰り返す
○顔色が悪い
○繰り返し起きるおう吐
○イチゴジャムのような血便
○お腹のはり
☆海外の発売後の調査では、本剤の初回接種から31日間(腸重積のほとんどは初回接種から7日間に発症)は腸重積のリスクが増加する可能性があるとされています。そのため、特にこの期間は健康状態を十分に観察してください。
ロタリックス、ロタテック内用液を接種した後の副反応について
ワクチンを接種した後に、ウイルスに対して身体が何らかの反応を示すことがありますが、通常は数日程度で治ります。
☆国内臨床試験で接種後30日間に報告された主な副反応
ぐずり(7、3%)、下痢(3、5%)、咳・鼻水(3、3%)
ぞの他:発熱、食欲不振、おう吐など
☆海外臨床試験で報告された副反応
ぐずり、下痢、(1~10%未満)、鼓腸(お腹がふくれること)、腹痛、皮膚炎(0、1~1%未満)
☆海外の市販後調査で接種後に報告された主な副反応
腸重積症、血便排泄、重症複合型免疫不全(SCID)のある患者さんのワクチンウイルス排泄を伴う胃腸炎
☆【胃薬品医療機器総合機構法に基づく救済程度について】
ロタリックス内容液を適正に使用したにもかかわらず発生した副反応などにより、入院が必要な程度の疾病や障害などが生じた場合は、胃薬品医療機器総合機構法に基づく被害救済の対象となります。健康被害の内容、程度に応じて、薬事・食品衛生審議会での審議を経た後、医療費、医療手当、障害年金、遺族年金遺族一時金などが支給されます。
気になる症状が発生した場合には、医師にご相談ください。
接種費用と実際の接種
接種費用は1回につきロタリックスは15000円、ロタテックは9000円です。具体的には受付で日時を予約してください。実際の接種は他のワクチンとの関連などをよく相談してからの接種になります。
なるべく初回接種を生後6~12週の間に受けさせてください。腸重積などの副作用が心配なくなります。