実際に麻疹にかかると、肺炎、中耳炎をしばしば合併し2000例に1例程度 は脳炎を合併します。毎年数十人前後が麻疹により死亡していますが、その30~40%は肺炎によるもので、特に3歳未満の肺炎死亡が多いといわれています。脳炎は肺炎に比べて発症頻度は低いのですが、回復してもしばしば神経系後遺症をのこします。また、麻疹はほかの疾患にくらべても脳波異常などの神経系障害をよくおこすと言われています。特に、年長児、成人になって罹患した場合には脳炎の発生頻度が上昇しています。極めてまれには、数十万人に1例程度の頻度で、麻疹ウイルス持続感染により、数年後に致命的な亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を起こすことがあります。乳児期、幼児期早期の罹患では、SSPEの頻度が高いと言われています。

麻疹ワクチンは生ワクチンで実際に軽い麻疹に罹患するため、上記の合併症をおこすことがしられています。しかし脳炎の発症頻度は実際に罹患するのに比較し、約十分の一に減少します。麻疹は伝染性が強く、必ず罹患する疾患です。このような意味でも、リスクはあってもワクチンを接種することをお勧めします。

従来日本は麻しんワクチンを1回しか接種していなっかったため、接種してからの期間が長くなり抗体が低下して、高学年、大学生、社会人での流行や、アメリカへの麻しんの持ち込みの悪評版が社会問題となっていました。このため厚生労働省も数年前よりやっと重い腰をあげ、麻しんワクチンの2回接種を勧めるようになってきました。このことは多くの方がご存じなのですが、いまだにもう1回接種しているから大丈夫というかたも少なくありません。とくに大学生以上の大きい方は必ず2回目の麻しんワクチンを接種しているかどうか確認してください。