ヒトメタニューモウイルスの集団発生がみられます。乳幼児より3歳から5歳の年齢が中心で、幼稚園、保育園での集団発生が起きています。検査ができない施設が多く、特に内科ではまず検査はおこなわれず、小児科専門医中心での把握が中心になっているためか、ある程度広まってからわかることが多いようです。インフルエンザの流行はやや収まっていますが、COVID19が徐々に増加傾向にあります。子どもは症状が弱く気が付きにくいのが特徴です。すこしでも怪しいと感じたら早めの検査をお願いします。
以下は武蔵野日赤の長澤先生の論文からの引用ですが
過去3年間、世界的なCOVID-19の大流行により、前例のない感染対策(non-pharmaceutical interventions: NPIs)が行われ、他の多くの小児感染症の疫学に影響を与えました。多くのウイルスや細菌への曝露が長期にわたって減少した結果、様々な市中獲得病原体に対する免疫刺激が不足し、これらの病原体に対する「ナイーブ」集団が拡大し、集団免疫が低下して、子どもたちがこれらの感染症にかかりやすくなることが予想されました。このような背景を踏まえて、「免疫負債(immune debt)」という概念が提唱されました(Infect Dis Now. 2021;51(5):418–423)。簡単に言えば、NPIsによる感染対策バリアーが解除された後、重症度の異なる多くの感染症が疫学的にリバウンドし、1年を通して予測不可能な流行が起こることを懸念したものです。世界的に上記を支持する疫学的報告が多数され、多くの研究者が、「免疫ギャップ(immunity gap)」とも呼ばれる「免疫負債」の概念に同意する論文が発表されています。一方、この概念が一部誤解され、ソーシャルメディアやネットワーク上で多くの論争や極論が起こり、議論を呼んでいることもあります。
今まではまれに数年1例程度しか見られなかった感染症や、いろいろな感染症が同時に流行するという異常な状態が現状です。大人をふくめた感染症の診断には経験を積み重ねている小児科専門医の役割が重要になっています。