RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus RSV)は、乳幼児(特に2歳以下の乳幼児)の肺炎や細気管支炎等の下気道感染症を引き起こす主要なウイルスです。一般に1歳までに50%以上の乳児が感染し、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染します。国内で実施された調査では、急性細気管支炎による入院患児(3歳未満)のうち、RSウイルスに起因するものが76.5%と報告されています。冬期を中心に、乳幼児に下気道の広範な狭窄を引き起こし,臨床的に喘鳴,努力性呼吸(多呼吸,胸郭陥凹,腹式呼吸など)を特徴とします。また発熱がない場合もあり、注意が必要です。最近では季節に関係なく流行がみられるようになっています。獲得免疫が不完全なために再感染が高率にみられ、乳幼児では毎年RSウイルス感染に罹患する症例もみられます。パラインフルエンザ,インフルエンザ、ヒトメタニューモウイルスなども同様の症状を引き起こし、流行が重なると診断に苦慮します。斉藤小児科内科クリニックでは鼻咽腔からの検体採取により15分程度でそのウイルス同定をおこない他のウイルス感染と区別し、適切な治療法を選択する努力を行っています。
治療は確率されているものはありませんが、単回のステロイドの内服と1日3回以上の吸入により、入院治療を防ぐことができます。またRSウイルス感染は後遺症として幼児期の喘息の原因の90%以上をしめるとされていて、積極的な吸入療法の導入で喘息への移行を防ぐことができます。従って診断がおこなわれずに、積極的な1週間の濃厚治療のチャンスが失われた結果、喘息として長期の投薬が行われることになります。
重症例も少なくなく,特に低出生体重児や先天性心疾患のある患児では致死的経過をとることもあり、要入院の例は少なくありません。乳児では分泌物が粘稠になって急速に悪化したり突然無呼吸に陥ることがあるので,入院加療が望ましいとされています。