日本ではアトピー性皮膚炎にたいするステロイド療法にたいする忌避が多く、保湿剤、民間療法のアトピービジネス療法がはびこりアトピー性皮膚炎を悪化させる要因となっていて、皮膚科学会などにより何回もこの傾向にたいする警鐘がなされてきています。具体的にも非ステロイド剤の軟膏であるアンダームが使用することにより皮膚炎が悪化する報告が多数報告され(アンダーム皮膚炎)その結果発売禁止になった経過があります。
今回浜松医科大学、国立成育医療センターは、欧米で広くおこなわれているプロアクティブ療法が非常に有効で適切な治療で半年から数年以内で薬を使用せずにすむようになるという報告をしています。
1)初めに約1週間程度かけステロイドの軟膏で皮膚症状を完全に回復させ、次は週に2回位ステロイド軟膏を塗っていると重症のアトピー性皮膚炎が改善します。プロアクティブとはひどくなる前に炎症を抑えてしまうという考え方です。アトピー性皮膚炎はガサガサしているので、皮膚が乾燥している、だからうるおい、脂分を皮膚に与えればいいという日本独特の考え方ではなく、ガサガサしているのは皮膚に炎症があるからであり、炎症を積極的におさえてあげれば、アトピー性皮膚炎は直るという立場で治療をおこなうのが欧米の主流になっています。日本独特のガラパゴス化による保湿剤中心のアトピー性皮膚炎の治療は見直すべき時期になっています。
2)ステロイド軟こうで皮膚症状の改善後、非ステロイドアトピー性皮膚炎治療薬のタクロリムス軟こうを6週間連日塗って再発がないことを確認し、その後タクロリムス軟こうを週に2回予防的に塗っておきます。皮膚の改善度はステロイド軟こうのほうが有効で、タクロリムス軟こうは乳幼児には使用できないことになっています。
3)上記の方法をリアクティブ療法といいアトピー性皮膚炎の症状がでてから軟こうをぬる方法を、リアクティブReactive療法といいます。アトピー性皮膚炎の発疹が出た時だけスデロイドやタクロリムスの塗り薬を塗るリアクティブ療法による治療法よりもプロアクティブ療法のほうが再発が少なく、皮膚の良い状態を維持することが出来て、さらにさらに再発までの期間が長いのが特徴です。
このようにアトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法は悪化する前から治療をすることにより、痒み→掻く→皮膚症状の悪化→痒み→掻く→皮膚症状の悪化→痒みという悪循環を断つことができる有効な治療です。