アデノウイルス感染症とは?

ポイント

咽頭結膜熱や胃腸炎、膀胱炎などを引き起こすアデノウイルス。プール熱とも呼ばれる咽頭結膜熱は、初夏から夏に流行することから、これからの季節に留意したい感染症のーつとれています。迅速検査で適切な診断につなげ不必要な薬剤を回避し、周囲への感染を防ぐとともに親の安心を得ることが大切になります。

ADVの主要症状は上気道炎、咽頭結膜熱、胃腸炎

アデノウイルスは主に呼吸器、結膜、腸管に感染し、咽頭結膜熱や流行性角結膜炎、性膀胱炎、胃腸炎、肺炎など、さまざまな疾患の原因になります(表1)。呼吸器感染では、重症の肺炎を起こしたり、髄膜炎や脳炎などを併発したりすることもまれにあるので、軽症のみではないことを認識する必要があります。
ADVの血清型は現在、50以上あるとされ、疾患の関連性が明らかになっています。例えば、咽頭結膜熱は3、7、11、14、16、21、50型、出血性膀胱炎は11、34、35、55型
などが関与するとされています(表2)。また、ADVの血清型が同じでも、人によって現れる疾患は異なることがあり、ウイルスの体内への侵入部位が関連していると考えられています。
疾患の実際は、高熱でノドに膿がついている上気道炎型、この場合数日後に結膜炎を合併することもあります。胃腸炎型は嘔吐、下痢、白い便で検査をしてADVが検出される型で、ノドにも症状がでてノドの検査でも陽性にでることが大部分です。胃腸炎型の注意点としては腸重積の合併が多く、腸重積になった乳幼児で便の検査でADVがかなりの確率で検出された、という報告があります。したがって下痢の治療でよく処方されるロペミンは使用しません。

プールを介した感染より集団生活、家庭内の感染が主因

ADVは感染力が強く、咳やくしやみなどの飛沫感染だけでなく、汚染された物品(タオルなど)からも簡単に感染します。咽頭結膜熱はプールを介しての感染が多くみられたことから「プーノレ熱」と呼ばれますが、プーノレ水の塩素濃度が保健所の基準値であれば予防できるので、現在では集団生活や家族内での感染が主な原因とされています。咽頭結膜熱の流行のピークは夏期ですが、ADVは1年中活動しているので、高熱が続き、咽頭の発赤、膿などの所見があるものには必ず検査をして確定診断を行います。特に特効薬はないのですが抗生剤の無駄な使用をさけ周囲への伝染を防ぐためです。
かつてADVの診断は、臨床症状で判断していました。発熱症状しか現れていない場合は血液検査など行いましたが、白血球が多かったり、少なくなったり、CRPが強かったり少なかったりするのであまり役に立ちませんでした。近年は簡単な操作で判定が容易に得られる迅速検査法が普及し、診断の補助としてその検査キットが用いられるようになっています。昨今では咽頭結膜熱などは学校感染症に指定されているので、施設側から医療機関で感染の有無を調べるよう、促されているために、子どもの目が充血していると、保護者が子どもをすぐにクリニックへ連れてきて検査を希望なさることが多くなっています。

熱が高くてもADVと分かれば保護者の不安も軽減

クリニックで行う迅速検査は、まず目やになど眼症状があれば目やにからウイルスを検出します。目やにが出ていなければ、目を強く閉じてもらい出てきた涙を綿棒でぬぐいます。眼症状がなければ咽頭に綿棒を挿入しますが、目(結膜)の方が子どもの抵抗が少なく簡単です。咳がなくて発熱がある状態では、まずA群溶血性連鎖球菌(溶連菌)の感染の有無を検査キットで確認し、陰性が示されたらADVの検査を行います。下痢がある場合は、便によりウイルスの同定を行います。迅速検査を行う意義について、ADV感染症は対症療法が主体で感染の有無が分かることで、不必要な抗生剤を使わずに済むこと、またAD胃腸炎なら強い下痢止めによる腸重積の発症を考慮した治療を選択します。高熱が続いていると保護者の方々は非常に心配されるが、ADVならば5日間安静にしていれば必ず治ります。それを説明することで、皆安心してくれます。迅速検査は過度の不安を軽減する役割があります。いろいろな可能性を説明するより、検査の結果、ADVに感染しています、5日間安静にしてください、の二言で済む方が、理解が得やすくなっています。病気の初期に迅速検査を行うと陰性と出てしまうケースもありますが、しかし、ADVの場合、経験上では陰性が示された場合は日を改めて検査してもほぼ陰性になります。

迅速検査が簡単に行われない理由

迅速検査は簡単に行え、結果もすぐに分かります。しかし、3歳児まで包括制(小児科外来診療料)を選択している医療機関では、検査を実施しないところが少なくありません。検査をすることで、その費用が医療機関の持ち出しになるからです。また検査を専門に扱う人員が確保されているかどうかも、検査の実施に影響を及ぼします。検査担当の職員がいなければ、看護師などが他の業務と兼務することになり対応が難しくなります。原則としてはかかりつけのクリニックでの行うべき検査なので親御さんはこの点を留意してください。

最近のトピックスより

パナソニック エコシステムズは食塩水を電気分解して得られる「次亜塩素酸水溶液」から揮発した有効塩素成分が、咽頭結膜熱の原因「アデノウイルス」を99%以上抑制することを確認した。約25平方メートル(約6畳)の空間でテーブルや手すりに付着した同ウイルスに対し、短時間で効果がみられた。食品業界や医療・介護施設では次亜塩素酸を用いた洗浄、除菌、脱臭などの作業が日常的に行われており、そうした室内環境においてアデノウイルスの抑制が期待される。
アデノウイルスに対する有効塩素成分の効果をみるため、回転式除菌フィルターに約10ミリグラム/リットルの次亜塩素酸水溶液を含浸、一定の風をフィルターに当てて有効塩素成分を揮発させた。アデノウイルスを付着させた試料に、有効塩素成分を暴露させる、させない(自然減衰)場合で検証試験を行った。暴露させたものは60分でアデノウイルスを99%以上抑制していたことが分かった。

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