BCG接種の行政処置が頻繁に改正されています。小中学校でのBCGの中止、乳幼児でのツ半なしでの接種、生後6か月未満での接種そして今回の生後1歳までの接種延期、標準接種年齢が生後5か月から8か月に変更という経過です。
根拠として結核発生が多くなったというわけではなく1歳未満にもっと必要なワクチンがあるため、やむをえず時期をおくらせる、というのが本当のところです。BCGに対する評価は専門家のなかでも分かれていますが、推進派の先生でも6ヶ月以降にずらすのは乳幼児の結核予防の立場からは全く意味がないと述べていて、今後中止に向かう可能性もあります。実際、BCG接種の根拠がどんどんうすれていて、推進する立場の人はいるのだろうかとさえ考える施策です。私も個人的には中止すべきだろう、と考えています。
上記の視点を根拠にしてBCG接種をやめてしまうのには早期すぎるという見解もあります。結核研究所の森先生によると、「BCG接種がなければ乳幼児の結核罹患率は米国の2倍、結核性髄膜炎、粟粒結核が年間10件程度発生するだろう、BCGの有効性は80%以上という根拠がある」、などとのべています。しかしこの根拠は乳幼児期早期に副作用を心配しながら接種することを前提にしています。
一方、結核研究所のHPでBCG接種政策として以下のような意見が掲載されていましたが不思議なことにこれが今では見ることはできなくなっています。なにか意図的なものを感じます。
以下にその内容を記します。
結核感染が少なくなれば、BCG接種の利益は少なくなる。従って、かつてはBCG接種を熱心に勧めていた国でも、今では中止した国も少なくない。スウェーデン・チェコ・フィンランド・ドイツ・イギリスなどである。これに、初めからBCG接種を導入しなかった米国やオランダを加えると、BCG接種を行っていない先進国のほうが多い。
わが国もそろそろ中止を考えるべき時が近づいている。問題は、何時、どのような条件が揃った地域から、どのようにして中止に踏み切るか、ハイリスクとして接種を続けるグループは何か、などである。既に中止した先進国から多くの報告が出ているので、これらを参考に、早急検討することが望まれる。
BCG接種を中止すれば、逆に強化しなければならない施策も少なくない。
常石敬一「結核と日本人―医療政策を検証する」のなかでこう述べています。「BCGの予防効果に頼りがちな日本の結核制圧政策は、患者を見つけ出し治療することが基本となっている米国の政策など、世界の他の国と比べてもかけ離れた部分がありました。日本でも考え直す時期にきています。」
日本の結核行政は、結核が過去の病気というイメージから専門医が少なくなってきていること、結核研究所中心の専門家集団の意見を聞かざろうえず、今さら効果の正確な調査は予算上無理だし、更に本来の結核患者を早期に見つけ、周囲に広げないという方向転換も無理ということで、従来のまま、あえて波風はたてずに1歳まで予防接種の期間を延ばす、ということにおちつくのでしょうか。少なくとも任意接種にして保育環境などを考慮しながら選択制とし、乳児健診の時に強制的に施行する現行の方法はやめてもらいたいものです。