迅速検査とは、簡単なキットを使い短時間で原因病原体を検出する検査です。
インフルエンザなどの感染症は、迅速検査で早期発見することで、
スムーズな治療の手助けとなり、早い症状の改善につながります。
A型・B型インフルエンザ
インフルエンザにはA型・B型があり、その年により流行は異なります。いずれも高熱・筋肉痛などが主症状で、一番怖い合併症は脳炎です。特に脳炎は発熱後48時間以内に発症することが多く、早期の診断・治療開始が必要です。最近は迅速検査法が進歩し、鼻に綿棒をいれ検体をとり、10から15分程度で判定できるようになっています。治療薬もA型に効くシンメトレル、A・B両方にきくタミフル、リレンザという薬が劇的に効きます。したがって、12月・1月・2月での高熱では、まずインフルエンザの検査が必要でしょう。
RSウイルス感染症
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus RSV)は、乳幼児(特に2歳以下の乳幼児)の肺炎や細気管支炎等の下気道感染症を引き起こす主要なウイルスです。冬期を中心に、乳幼児に下気道の広範な狭窄を引き起こし,臨床的に喘鳴・努力性呼吸(多呼吸・胸郭陥凹・腹式呼吸など)を特徴とします。獲得免疫が不完全なために再感染が高率にみられ、乳幼児では毎年RSウイルス感染に罹患する症例もみられます。インフルエンザなどと同様の症状を引き起こし、関東地方では12月から1月中旬までと流行する時期も重なっているため、よくインフルエンザと間違えられます。
当クリニックでは鼻咽腔からの検体採取により15分程度でそのウイルス同定をおこない、インフルエンザと区別し、適切な治療法を選択する努力をおこなっています。
重症例も少なくなく、特に低出生体重児や先天性心疾患のある患児では致死的経過をとることもあり、要入院の例は少なくありません。ウイルス性感染症なので基本的には保存的治療に限られ、水分の補給を充分におこない、喘息に準じた治療をおこないます。軽症例では外来にて経過を観察しますが、乳児では分泌物が粘稠になって急速に悪化したり突然無呼吸に陥ることがあるので,入院加療が望ましいとされています。
溶連菌感染症
溶連菌というのは溶血性連鎖球菌というばい菌の略で、この菌の毒性の強いものに感染すると、全身が真っ赤になり、しょう紅熱といわれ、昔は法定伝染病として扱われていたような病気です。この菌に感染すると、発熱、苺のような舌(舌にぶつぶつした赤い小さな突起が目立つ)、のどの痛み、時には発疹が見られます。問題なのはこの病気はかかってから1,2週間に腎炎とリウマチ熱の合併症を起こすことです。抗生物質がとても良く効くので早期に診断し、最低10日間は抗生物質を服用し、合併症を防ぎましょう。
当クリニックでは綿棒でのどをこすり検査をし、10分程度の迅速検査で結果をだすことが可能です。とても役に立つ検査です。
アデノウイルス感染症
アデノウイルスには49の血清型があり,多彩な臨床症状を起こすことで最近注目されています。 上気道炎・角結膜炎・胃腸炎の3つが主要症状で,3・4型と咽頭結膜熱,8型と流行性角結膜炎,40・41型と胃腸炎,11型と出血性膀胱炎の関係がよく知られています。このうちの咽頭結膜熱がプール熱といわれ,咽頭扁桃炎、結膜炎、発熱を主症状とし、幼児に好発します。プール内より集団生活や家族内での感染(通年性)が多いことが最近知られてきました。3型によるものがほとんどですが、近年、7型による本症が少数ながら報告されています。対症療法が主体で、高熱が続いても、全身状態は良好のことが多いのですが、咳を伴い全身状態が不良の場合は,7型による肺炎を疑います。結膜炎に対して、点眼液を使用します。
当クリニックでは咽頭、結膜から綿棒で検体を採取し15分程度でそのウイルス同定をおこなっています。
ロタウイルス感染症
別名、白色便性下痢症(白痢)と呼ばれています。臨床症状は、嘔吐・下痢。発熱です。特に乳幼児では、他のウイルス性腸炎に比較し、下痢がひどくなり、脱水で重症化しやすいので注意が必要です。また無熱性痙攣をおこすことも知られています。このように、他の下痢症に比較し重症であり、早期に迅速検査で診断を確定し、早めの食事療法、脱水予防が大切です。
当クリニックでは、肛門より綿棒で便をとる独自の迅速法を考案し、約10分で結論をだし、早期診断により入院をさけるよう努力しています。
ノロウイルス感染症
ノロウイルスの迅速検査ができるようになりました。平成19年11月よりノロウイルスの迅速検査が可能になりました。検体は便を使用します。まだ保険は通っていません。かかりつけの方には無料で検査しています。便の量は小豆大のものが必要です。また検査にかかる時間はおよそ30分です。従って遅い時間での受診の場合、結果の報告が次の日になることもあるのでご注意ください。現在までの経験では、下痢がはじまってからすぐより、数日たったほうが陽性になる率が高いようです。このようなことにより検査でマイナスと判定されても、ノロウイルス感染症を完全には否定できないと思ってください。
ノロウイルス感染症の臨床症状 (国立感染症研究所ウイルス第二部 片山和彦)より引用:
『ノロウイルスのボランティアへの投与試験の結果から、潜伏期は1~2日であると考えられている。乳児から成人まで幅広く感染するが、一般に症状は軽症であり、治療を必要とせずに軽快する。まれに重症化する例もあり、老人や免疫力の低下した乳児では死亡例も報告されている。嘔気、嘔吐、下痢が主症状であるが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛などを伴うこともある。ウイルスは、症状が消失した後も3~7日間ほど患者の便中に排出されるため、二次感染に注意が必要である。ボランティアのバイオプシー由来の腸管組織を病理組織学的に観察した結果から、ノロウイルスはヒトの空腸の上皮細胞に感染して繊毛の委縮と扁平化、さらに 剥離と脱落を引き起こして下痢を起こすらしいことが明らかになっている。しかしながら、このような現象がどのようなメカニズムによるものなのか、その詳細はまだ不明である。』
アデノウイルス腸炎
アデノウイルスには49の血清型があり、多彩な臨床症状を起こします。上気道炎・角結膜炎・胃腸炎の3つが主要症状であり、3・4型と咽頭結膜熱,8型と流行性角結膜炎、40・41型と胃腸炎、11型と出血性膀胱炎の関係がよく知られています。このようにアデノウイルスには種々の型がありますが、40・41型アデノウイルスがいわゆる腸管アデノといわれています。ロタウイルスと同様の下痢をきたしますが、その違いは、簡単にまとめる下の表のようになります。特にこのアデノウイルス腸炎は腸重積との関連がつよく、強い下痢止めは控えるべき、とされています。下痢がひどい場合、やむをえずロペミンなどの強い下痢止めを処方するときには、便中のアデノウイルスの確認をして、できれば数回、ないことを確認して使用すべきです。このウイルスはロタウイルスと同様の迅速検査で診断可能です。
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好発季節 |
合併症 |
平均年齢 |
ノロウイルス |
特に11月から12月 |
おう吐 |
全年齢 |
ロタウイルス |
12月から4月 |
白色便、肝機能障害、痙攣 |
2歳 |
アデノウイルス |
通年 |
急性虫垂炎、腸重積 |
5.2歳 |
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)
RSウイルス様の咳・呼吸困難・熱が続き、肺炎が疑われるが、レントゲンで異常なく、マイコプラズマでもない病気がはやっています。これはヒトメタニューモウイルス感染症ではないかといわれています。白血球はさほど増加しないのに、血沈、CRPなどの炎症反応が強いのが特徴です。
ヒトメタニューモウイルスはサーズで注目されてから知られるようになってきたウイルスで、RSウイルスとよく似たウイルスといわれています。ヒトメタニューモウイルスは1から2歳が最も多く、RSウイルスの初感染よりもおそく、後発季節は3月から6月頃流行ります。
迅速検査キットが利用できるようになり、インフルエンザ、RSウイルスでもなく、マイコプラズマでもない咳中心の風邪の場合この病気を疑い検査します。ただし検査キットはできたばかりで、保険ではまだ認められていないことととても高価で簡単にはできない、というのが実情です。但しこの検査で陽性になってきちんとした病名がつくと、家族はとても安心するので、必要なときにはちゅうちょなく、医療機関の負担で検査をおこなっています。治療は咳に対する対症療法が中心になり、中耳炎の合併に注意が必要です。
マイコプラズマ
従来マイコプラズマの診断には胸部レントゲン写真の他、採血により抗体の上昇によりおこなわれていました。ところが2013年頃より、直接ノドから検体を採取し短時間でマイコプラズマを診断する方法が確立されてきています。
現在2種類の検査キットが利用可能になっています。プライムチェックマイコプラズマ抗原は,イムノクロマト法により、咽頭ぬぐい液から肺炎マイコプラズマのP1蛋白を検出するキットです。リボテストマイコプラズマは、同じくイムノクロマト法により,咽頭ぬぐい液から肺炎マイコプラズマのリボソーム蛋白であるL7/L12蛋白を検出するキットです。
実際に当クリニックではプライムチェックマイコプラズマを用いて診断を試みてまいりました。その結果、想像以上に感度がよく、レントゲンで影のでる前に診断できた例もありました。実際にはノドの奥の咽頭後壁から綿棒で検体を採取し約10分程度で判定します。鼻よりは痛み、苦痛はありません。咳がひどく熱が続くような場合には是非検査をお勧めします。
コロナウイルス抗原検査
抗原検査の概要と特徴
はじめに
コロナウイルス抗原検査は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染の有無を迅速に判定するための検査方法です。PCR検査と並んで広く利用されており、特に感染拡大防止のために重要な役割を果たしています。
抗原検査とは
抗原検査は、ウイルスの表面に存在する特定のタンパク質(抗原)を検出する検査です。主に、鼻咽頭や鼻腔から採取した検体を使用して行われます。検査キットを使い、短時間で結果が得られることが特徴です。
検査の流れ
1. 検体の採取(通常は鼻腔または鼻咽頭)
2. 検体を検査キットに投入
3. 試薬を加え、一定時間待機
4. 陽性または陰性の判定結果が表示される
メリットとデメリット
メリット:結果が15~30分程度で得られるため、迅速な対応が可能です。また、専門的な設備や技術を必要としないため、医療機関だけでなく、イベント会場や職場などでも実施できます。
デメリット:PCR検査と比べて感度がやや低く、感染初期や無症状の場合は偽陰性となることがあります。症状がある場合や感染が疑われる場合に活用されることが多いです。
検査結果の活用
抗原検査で陽性となった場合は、感染の可能性が高いため、速やかに隔離や医療機関への相談が推奨されます。陰性の場合でも、感染初期などではウイルス量が少なく検出できない場合があるため、引き続き体調管理や感染対策が重要です。
まとめ
コロナウイルス抗原検査は、感染拡大防止のために迅速かつ簡便に感染の有無を判定できる重要な検査方法です。PCR検査と併用しながら、状況に応じて適切に活用しましょう。
百日咳抗原検査
百日咳抗原検査:リボテスト百日咳
検査の概要と特徴
百日咳抗原検査とは
百日咳抗原検査は、百日咳(Pertussis)の原因菌である Bordetella pertussis の抗原を検出するための迅速診断法です。百日咳は激しい咳発作を特徴とし、特に乳幼児や高齢者では重症化することがあります。早期診断と治療が重要な疾患です。
リボテスト百日咳の特徴
「リボテスト百日咳」は、百日咳菌抗原を検出するためのイムノクロマトグラフィー法による迅速診断キットです。主な特徴は以下の通りです。
迅速性: 検体採取から約15分程度で結果が得られます。
簡便性: 鼻咽頭ぬぐい液などの検体を用い、特別な機器を必要としません。
現場適応: 医療機関の外来や救急現場でも使用可能です。
検査の流れ
1. 鼻咽頭ぬぐい液などの検体を採取します。
2. 検体を試薬に加え、テストカセットに滴下します。
3. 15分程度で判定ラインの有無を確認し、陽性・陰性を判定します。
検査の意義と注意点
百日咳は初期症状が風邪と似ているため、臨床的な診断のみでは見逃されることがあります。抗原検査は早期診断に役立ち、感染拡大の防止にも有用です。ただし、症状や感染の経過によっては偽陰性となる場合もあるため、他の検査(PCR法や培養法)と併用することが推奨されます。
まとめ
リボテスト百日咳は、百日咳の迅速診断に有用な抗原検査キットです。医療現場での早期診断と適切な治療開始に貢献します。検査結果の解釈には臨床症状や他の検査所見も総合的に判断することが重要です。
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