乳幼児期は病気に対する抵抗力が未熟なため、病気にかかると、
重い後遺症が残ったり、命の危険にさらされたりすることもあります。
そうしたことを防ぐために、予防接種を受けることが大切です。
※当クリニックでは、防腐剤のチメロサールを使わないワクチンを優先的に使用しています。
安全なワクチンの選択
小児科医はそのワクチンの安全性と有効性に常に目を光らせ、ワクチンごとに最も良いワクチンを選択する義務があると考えています。ワクチンの安全性という問題を考えると、生ものであるワクチンには保存液、いいかえれば防腐剤がはいっています。この保存液がくせもので、いろいろな問題をおこしているのです。そしてワクチンは安全性の面より、より生のかたちで提供されるようになってきています。生酒、生ビールと同じなのです。したがってワクチンの保存をきちんとしないと劣化がおきる可能性があるのです。冷蔵庫での保管では、霜取の時高温になり、ワクチンの保管には不適切といわれています。ワクチン専用の保冷庫での保存がどうしても必要です。
本クリニックでは、乳幼児に使用中のワクチンは様々なメーカーの中から、殺菌作用のある水銀を含む防腐剤であるチメロサールが使われていないものを選択しています。ご安心ください。生ワクチン、麻疹、風疹、おたふく、水痘にはもともと、チメロサールは含まれていませんでした。不活化ワクチンのうち日本脳炎ワクチンは平成14年より、インフルエンザワクチンは平成15年より、3種混合ワクチンは平成16年よりチメロサールを含まない製品が入手できるようになり、採用しています。現在では、メーカー側も必死に含有量を減らしたりしている事情もあり、一部の三種混合ワクチンに含まれるチメロサールの濃度は低いので問題ありませんが、接種回数が多いインフルエンザワクチンではチメロサールフリーをお勧めしています。
ワクチンの種類と費用
ワクチンについて接種の方法により分類してみました。大きく分けて各医療機関で行っている「個別接種」と集団で日時・場所が指定されている「集団接種」があります。「個別接種」には以下の項目、「定期接種(市・区から通知がくる)」と「任意接種(自分で費用を負担しておこなう)」があります。
集団接種
西東京市はBCG、練馬区はポリオの集団予防接種を行っています。日程などは下記リンク先よりご確認ください。
ワクチンについての重要事項
チメロサールの問題
チメロサールについては以前から自閉症の原因になるといった議論がありましたが、今ではその因果関係はないとされています。また現在日本で使われている予防接種でチメロサールを含むものは三種混合DPTの4社中の1社、インフルエンザワクチンは同一メーカーでも含むものと含まないものがあります。いずれも含有量は以前に比較して非常に少なくなっていて、チメロサールによる具体的副作用の報告はありません。しかし、チメロサールに含まれる水銀という不気味な物質にたいして不安感をいだきます。またメーカー側もチメロサールはできるなら入れない方がいいと考えていてできればゼロに、入る場合にもなるべく少なくする努力をしています。
当クリニックではチメロサールについては以下のような考えに立って指導しています。
- 予防接種をする子どもの親がワクチン保存液にたいしてきちんとした知識をもっているか。
- 3種混合など最大4回の接種ではまず無視できるが、インフルエンザワクチンのように毎年2回接種し、12歳まで最大24回接種するものはなるべくチメロサールフリーのほうが望ましい。
- 現時点ではすべてフリーのもので済ますことができるのでそれを勧める。
- 但しフリーのものが入手できない場合接種するメリットのほうが大きいので中止する必要はない。
- 主治医の先生によく相談して納得してから接種すべきである。
個人的にはワクチンによるゼラチンを含む保存液によりゼラチンアレルギー患者をつくってしまった、という苦い経験から保存液に対してつねに興味をもっているためこのような対応をしています。
チメロサールの問題 最新の情報
1999年アメリカ小児科学会、WHOはワクチンからのチメロサール(エチル水銀)の除去を指示し、現時点では欧米のワクチンにはチメロサールは全く含まれなくなっていきていました。
2012年国連環境計画(UNEP)が環境中から水銀除去に向けた動きを推進していることは各種報道でご存じのことと思います。ここのなかでワクチンに含まれるチメロサールの問題が再びとりあげられ、以下のような結論を提示しています。
チメロサールを保存剤として使用されるメリットとしては、保存条件の適応のひろさ、バイアルで数人分をまとめて提供して取分けて使用する場合の細菌等の汚染の防止などの経済的メリットや開発途上国での使用が可能などのメリットがあげられています。ほかにも生産過程、梱包などの廃棄物を含めた地球環境に優しい点などがあげられています。
問題点とされた自閉症との関連は完全に否定され、現時点までではアレルギーの報告もなく、予測できない副作用を考えて使用を控えるよりも、使用するメリットのほうが多いとし、アメリカ小児科学会、WHOはワクチンへのチメロサールの含有を容認することとなりました。
現在含まれて製品もかなり含有濃度が薄くなっています。しかし日本の状況をみてみると、ワクチンに対する不信感、清潔意識の高い国民性、保存におけるワクチンの劣化の問題などを考慮し、保存液はなるべく安全性の高いものを使用し、保冷庫で保存したワクチンの接種が望ましい、と考えています。発展途上国ではない地域、欧米ではすでにチメロサールフリーのワクチンの接種が当然のようにおこなわれています。従って当クリニックでは従来どおりチメロサールフリーのワクチンにこだわって接種していきたいと思います。
具体的な予防接種の進め方
特徴
HIB 肺炎球菌ワクチンの接種を最低2回優先的におこないます。ロタウイルスワクチンは副作用(腸重積)の発現を考慮してなるべく早期から行い、コストパーフォーマンスを考慮し早くから行っている場合はロタテックで3回を、接種開始が遅れた場合はロタリックスの2回をお勧めしています。また現在まだ任意接種ですが重要なワクチンであるB型肝炎ワクチンの水銀の含まれないものをお勧めしています。またインフルエンザワクチンも水銀を含まないチメロサールフリーのワクチンを接種します。
パターン1
生後6週 ロタテック(5価ロタウイルスワクチン)経口
4週後 ロタテック2回目経口 HIB1回目 肺炎球菌ワクチン1回目
4週後 HIB2回目 肺炎球菌ワクチン2回目
1週後 4種混合ワクチン1回目 B型肝炎ワクチン1回目 ロタテック3回目経口
4週後 HIB3回目 肺炎球菌ワクチン3回目
1週後 4種混合ワクチン2回目 B型肝炎ワクチン2回目
4週後 4種混合ワクチン3回目(練馬区の方はBCG同時接種も可能)
1週以上の間隔で BCG
B型肝炎ワクチン追加接種は最終接種より6ヶ月後
1歳 MR(麻疹、風疹)ワクチン、水痘ワクチン同時接種
4週後 HIB追加接種 肺炎球菌ワクチン追加接種
1週後以上 おたふくワクチン
1歳半ごろ 水痘ワクチン2回目接種
パターン2
生後2ヶ月 ロタテック(5価ロタウイルスワクチン)経口
HIB1回目 肺炎球菌ワクチン1回目
4週後 HIB2回目 肺炎球菌ワクチン2回目
1週後 4種混合ワクチン1回目 B型肝炎ワクチン1回目 ロタテック2回目経口
4週後 HIB3回目 肺炎球菌ワクチン3回目
1週後 4種混合ワクチン2回目 B型肝炎ワクチン2回目 ロタテック3回目経口
4週後 4種混合ワクチン3回目(練馬区の方はBCG同時接種も可能)
1週以上の間隔で BCG
あるいは4種混合ワクチン3回目を接種せずにBCG
4週後 4種混合ワクチン3回目
B型肝炎ワクチン追加接種は最終接種より6ヶ月後
1歳 MR(麻疹、風疹)ワクチン、水痘ワクチン同時接種
4週後 HIB追加接種 肺炎球菌ワクチン追加接種
1週後以上 おたふくワクチン
1歳半ごろ 水痘ワクチン2回目接種
パターン3 開始が生後3、4ヶ月以降とおくれた場合
生後3、4ヶ月 ロタリックス(1価ロタウイルスワクチン)経口
HIB1回目 肺炎球菌ワクチン1回目
4週後 HIB2回目 肺炎球菌ワクチン2回目
1週後 4種混合ワクチン1回目 B型肝炎ワクチン1回目 ロタリックス2回目経口
4週後 HIB3回目 肺炎球菌ワクチン3回目
1週後 4種混合ワクチン2回目 B型肝炎ワクチン2回目
4週後 4種混合ワクチン3回目(練馬区の方はBCG同時接種も可能)
1週以上の間隔で BCG
あるいは4種混合ワクチン3回目を接種せずにBCG
4週後 4種混合ワクチン3回目
B型肝炎ワクチン追加接種は最終接種より6ヶ月後
1歳 MR(麻疹、風疹)ワクチン、水痘ワクチン同時接種
4週後 HIB追加接種 肺炎球菌ワクチン追加接種
1週後以上 おたふくワクチン
1歳半ごろ 水痘ワクチン2回目接種
パターン4 開始が生後5ヶ月以降とおくれた場合
生後5ヶ月以後開始 HIB1回目 肺炎球菌ワクチン1回目
1週後 4種混合ワクチン1回目 B型肝炎ワクチン1回目
3週後 HIB2回目 肺炎球菌ワクチン2回目
1週後 4種混合ワクチン2回目 B型肝炎ワクチン2回目
3週後 HIB3回目 肺炎球菌ワクチン3回目
1週後 4種混合ワクチン3回目(練馬区の方はBCG同時接種も可能)
1週以上の間隔で BCG
あるいは 4種混合ワクチン3回目を接種せずにBCG
4週後 4種混合ワクチン3回目
B型肝炎ワクチン追加接種は最終接種より6ヶ月後
1歳 MR(麻疹、風疹)ワクチン、水痘ワクチン同時接種
4週後 HIB追加接種 肺炎球菌ワクチン追加接種
1週後以上 おたふくワクチン
1歳半ごろ 水痘ワクチン2回目接種
パターン5 予防接種による発熱が心配なかた
肺炎球菌ワクチンは発熱率が高いワクチンで20%という報告もあります。従って肺炎球菌ワクチン単独でも、他のワクチンと一緒にうっても同じように発熱します。気になる方は肺炎球菌ワクチンだけ単独のスケジュールをお勧めします。パターン1、2で準拠しますが、具体的には個々の接種スケジュールを接種開始時に計画します。
その他 将来外国で生活する可能性のある方
地域によって異なります。例えばアメリカの場合はBCG接種は避けたほうがいいでしょう。また日本と外国で使用するワクチンが異なるものもあるので注意が必要だったり、定期接種よりも早期にうつ必要のあるワクチンもあります。日本もやっとグローバルスタンダードにちかづいてきていますがまだ遅れているものもあります。具体的な相談は診療の時にお願いします。電話お断りしています。また相談のみの場合は自費診療になります。